
壁のサンプルを作る村山先生 |
日本の建築の良さがわかる
「それは、意識じゃわからないね。それを僕が思ったのは向こう(ドイツ)から戻ってきて、設計の仕事をしようと思った時で。
今から20年くらい前ですけど、日本の建物の良さが解るのね。外国から帰ってくると。余計解る。だからこっちにいる人よりも
その良さをかき集めてもできる訳ね。でも自分でやろうとしていること、それはまた別の次元にあって、自分が思うことをやると
他の形になるし、特にシュタイナーのことを勉強していると、持っている自分、内部から生まれてるくるものは、その既存の日本
の建築とは別だと、どっちを取るべきかとね。日本の建築のいいところを取ってやるのか、無視して自分のやりたいことをやろか
と迷っていて、二つに一つどっちをやろうか迷ったときがあって、その時にね「自分の思う所」をやろうと。」
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転機となった仕事
自分の建築を発見するまでの苦労。「自分の思う所」言葉ではシンプルに言い表せる言葉ほど奥深く、真理を突き、新しく創造
することに困難が必要なものはないと思いました。「それで、設計した2作目かなあ。その次に創造の森をやって栃木の。地元
の大工さんで、やってもらって。その時の経験はよく話すんだけど、日本の建物、木造建築は全然知らなくて、とにかく7メー
トルぐらいのスパンを木造で持たせなくちゃならない、普通だったら鉄骨を入れるんだけど、入れないで、丈夫な建物を造って、
自分の造りたい空間の為にね。地元の棟梁に相談したり、模型作ったり。できあがったものを見ると日本風ではなかった」
「ところが、外国の人が見ると、「この建物にはヨーロッパのシュタイナー建築のいいところが沢山あるけど、いろんな窓の形だ
とか。ひとつだけ違うところがある。それは梁が飛んで見えてる所だ」って。そういう仕様は外国にはないんですよ。(笑)梁の
加工があるの。それは日本の民家にある。(笑)」地震が多いから日本は、そういう仕様にしないと持たないということで、全然
無意識でやっていたの。(笑)その考えでやっていたら、自然に日本にしかない建物になった。(笑)だから一生懸命自分の思う
ことをやっていると、見えてくるんじゃないかな?」
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自分がいいと思うものをつくってるだけですよ
迷いながら自分で導き出したものの中にあったものは、自分が育った日本の家屋にあった。環境やその土地の気候風土を考えたと
きに、自然に出てきた答え。その作風が原点となり、自分の思う空間作りを創造し、それが多くの人の共感を呼ぶことになります。
「まあ、自分がいいと思うものを作ってるだけですよ。」
村山先生の言葉には気負いもなく、ただ自分の信じた空間作りをしているんだという、静かな思いが流れているように思えました。
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ヨーロッパの古い街並みを参考に
今回の集合住宅を設計するにあたっての先生のお考えはどのようなものだったのでしょうか?
「そうですね、敷地が東西道路に面してるから東西に通路を作って、真ん中にちょっと広場みたいな、集合住宅の人たちの為の庭を
造ろうとした。こういう形体はヨーロッパにありますよね。入り組んだ古い町とか。ヨーロッパの古い街を沢山見てきているから、
そういうのを取り入れたいと思ったんですよね。」
ヨーロッパの古い街並みを取り入れた集合住宅。それは小さなコミュニテイが生まれる現代の装置でもあるようです。昔はその地域に
ゆるやかなコミュニティが自然と生まれ、それは人の目という防犯の役目も担っていました。
「日本は街路に沿って建物があって昔は緩衝地帯があって、そこにコミュニティが生まれて、夕涼みをするとか。今はそういうのには
対処できない時代になっていますよね、家の前を車が通るから、だから昔機能していた緩衝地帯を中庭に作ろうと。」
「直接道路のある外世界から自分の家に入るより、通路を通って庭を感じて自分の家に入ったほうがワンクッションあるから豊かなん
じゃないですか?」
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住んでる家やコミュニテイに自然と愛着を持ってもらえたらいいんじゃないかな
車社会になってしまい、生活道路にも車の往来がある。人が家の前でくつろぐという行為はなくなり、コミュニティ人が家の前でくつ
ろぐという行為はなくなり、コミュニティがなくなったのと同時に、他者が侵入してきも無関心な街並みを作る要因にもなりました。
「集合住宅は何家族か一緒の敷地で暮らすからねえ、昔みたいなべったりな付き合いは無理だとは思うけど、お互い挨拶ができるよう
な良好なご近所関係だったらいいよねえ。」「今は家の中にいて、心から幸せだっていう気持ちはあまり持てないでしょ。ただ寝るだ
け、ご飯食べるだけ、そうじゃなくて住んでる家やコミュニテイに自然と愛着を持ってもらえたらいいんじゃないかな」集合住宅で生
まれる、緩やかなコミュニティ。それは人付き合いは他者を思いやるという、コミュニケーションの原点に帰ることなのかもしれません。
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