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建物が街を形づくる
「彼がアパート設計の担当者になります。」と村山先生から紹介されたのが、村山事務所の竹沢孝浩さんでした。
アパート予定地、小田原視察の当日の朝でした。アパート設計にあたって、一緒に現地(小田原)を視察しました。
私はアパート予定地の隣近所だけを回るのだと思っていたのですが、近隣の学校から酒匂川まで、
かなり遠くまで丹念に視察を続ける姿に感心した覚えがあります。それはやはりその土地を形づくる成り立ちや風
景を建物に反映したい。「建物は街を形づくる」それを実践しているのだと後になって判りました。
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アトリエ系への就職
竹沢さんは長野県出身。小さい頃から絵を描いたり物を作ったりするのが大好きな子どもだったそうで、福井にある
大学の建築学科を卒業した後、村山建築設計事務所に入所しました。所員歴は8年目になります。
「福井の大学で講師をしていた人の建築事務所に入り浸っていて、(笑)そのときに事務所にある資料から村山建築
設計事務所を知ることになりました。そこの先生が村山事務所の建物をとても評価していて、村山の建物には必ず付箋が
付いてました。(笑)自分でも正直一番興味を持てたのが、村山の建築物で。そこの先生の勧めもあって、村山事務所の
面接を受けました」
当時、就職をする同級生達はゼネコンやハウスメーカーに内定する友人が多く、いわゆる建築家の事務所、アトリエ系に
就職を決めたのはクラスでも少なかったそうで、
「やっぱり他の設計事務所へ行った友達と話していると、村山事務所でやってきた事は他の友達が経験してきた事とは
全然違うな、という感じがするんです」
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突然の大仕事
「事務所に入って一番最初にやった建物は藤沢のお宅ですけど、入ってすぐに「担当」と言われて、新卒で一軒の物件を
担当することになり、これはスゴイことだなと。(笑)」
「あの現場はお施主さんが直営で、工務店が入ってないんです。だから現場監督がいなかったんで、現場監督は結局お
施主さんと設計事務所でやるしかなくて(笑)」
「家づくりの工程っていうのがわからないじゃないですか、新卒で経験もないから。だから先輩に聞いたり、大工さんに
「あと何日くらいしたら何工事が入れるんですか?」
という事も聞いていました。でも、あの仕事は勉強になりましたよね(笑)」
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建築家の役目
新卒でいきなり家一軒の担当。当時のお施主さんも「今だから言える不安だった(笑)」と。
そんな家づくりの戦場?とも言えるような現場を一緒にくぐり抜けてきた藤沢のお施主さんとは今でも家族ぐるみのお付き
合いをしているそうです。本来だったら大変な苦労話しもサラリと笑顔で話してくれる、いつも冷静な竹沢さんですが、
施主にとっては冷静な建築士さんは頼もしい存在です。
家づくりは大抵が初めての施主を冷静に的確に指導?相談に乗ってくれる。現場は生き物のようにどんどん成長し、
時には変更や問題点も現れます。短い時間で決断をしなければならない、
余裕のない施主に的確な判断が下せるように
アドバイスしてくれる建築士さんは、工務店さんと施主を結ぶ潤滑油の役割を果たします。
つづく
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